<現在までの進捗状況及び達成度>
次世代の住宅はロボット化されることが予想されている.本研究では,家庭内でのユーザの生活行動・活動を支援する技術の開発研究を実施している.
ヒトの把持作業においてよく見られる能動受動混合拘束下での物体操作のための制御アルゴリズムを開発した.
力覚人工現実感技術を用いて構築した空間内での作業を通じて利き手・非利き手の機能を数値的に計測し,器用度及び利き手度指標を定量的に評価する方法を開発した.
視覚障害者への地図情報の提示を目的とし,力覚提示装置を用いた触地図提示システムを開発し,10人の被験者に対する提示実験でその有用性を検討した.
柔軟指を使ったロボットハンドによる3次元空間における把持と操り動作を実現させる制御の方法について提案し,その有効性を実験的に確認した.
ロボットアームの先端に取り付けた全方位カメラにより未知の物体形状を認識し,その物体をもっとも適した位置で物体を把持するための方法を提案し,実験によってその有効性を検討した.
室内で,人と物の動きを観測し,どの人がどこから何を持ち去ったかあるいは持ち込んだかを認識し,データベースに蓄えておき,それに関する音声とジェスチャーによる質問に答えられるシステムを開発した.
普通のジェスチャーより複雑な内容を表現できる手話の認識の研究を行い,手指の形状や動きの特徴系列を抽出し,それをHMMによって学習と認識を行う研究を行い,基本的な手話単語の認識が可能となった.
頼まれた物を取ってくるサービスロボットのための自動走行を研究し,地図の作成時には三眼視でSIFT特徴の3次元位置を求めておき,地図に基づく自動走行時には単眼視で自己位置推定を行いながら走行するシステムを作った.
冷蔵庫を空けるごとに中を観察し,物の出し入れや庫内での移動を自動で認識し,あいまいな場合はユーザに音声確認するシステムを開発した.
脳卒中罹患後の上肢の回復期リハビリを家庭で実施できるようにするため,座位の安定しない患者にも適用し得るリハビリロボットの構造を明らかにした.このリハビリロボットは,痛めやすい患者の肩位置を拘束しない特徴をもつ.また,急性期−回復期−維持期のリハビリを通して同一のリハビリロボットを用いるためのポータビリティを確保しやすいコンパクトな構造である.
家庭用ロボットの安全性を確保するため,一つの関節に2つのアクチュエータを用いる冗長駆動関節の構成法を考案した.一つは,可変減速機(特許出願)と受動要素であるバネ・ダンパを用いて第2アクチュエータを構成するものであり,外力に対する順応動作の高い安全性が期待できる.もう一つは,第2アクチュエータにも通常の電動モータを用いる方法であり,指定したコンプライアント動作の特性を実現する制御法を確立した.
複数台の自動搬送車の各車両がコスト最小の経路計画を立てた上で,軌道上での衝突を回避するために当該車両間で交渉を行う.本研究では,遺伝的機械学習を用いて,交渉ルールを自律的に獲得する方法を開発した.また,4タイプの走行軌道を用いた計算機実験を行い,当該アルゴリズムの導入により総稼動時間が平均17%短縮することを確認した.
集荷・配達のための荷物割当と経路計画問題として知られるPickup and Delivery問題を対象とし,効率的な最適解の探索方法を開発した.また,PDPのベンチマーク問題を対象に数値計算による性能評価を行い,代表的な従来法と比べて安定して良質な解が得られた.
ロボット住宅の視環境を対象に,個人差,用途・目的によって要求される環境基準について研究している.
LEDなど,照明手法の多様化に対応するため,明るさ感を定量化する手法として「色モード境界輝度測定法」を開発し,パナソニック電工鰍ニ共同で「Feu(フー,フランス語で火や炎の意味)」という新たな明るさ感尺度を開発した.さらに鞄建設計を交えた共同研究により,Feuのバージョンアップと簡易計算法の開発に取り組んでいる.また,大和ハウス工業鰍ニ共同で,隣接する部屋の明るさ対比を利用した省エネ照明手法の開発にも取り組んでいる.
ディスプレイとプリンターの色合わせの問題を解決するため,観察者や照明環境の変化に対応した新しいCMSを開発している.また,測色機器を用いずに視感によりディスプレイキャリブレーションを行う方法を開発し,潟gイ,慨ORAと共同で関連技術の特許申請を行った.
高齢者特有の白内障簡易測定として,簡単な視感実験から水晶体のヘイズ値を推定する手法を確立した.また,白内障による彩度低下を軽減する照明技術を,吉忠マネキン鰍ニクロイ電機鰍ニ共同で高齢者用試着室照明CRS(Color Recovery System)を開発した.
東芝ライテック鰍ニ共同で,調節応答時間計測による眼疲労推定法を開発中であり,関連技術の特許も申請している.また,異なる照明光源に対する眼疲労評価を行い,有用性を確認した.
色覚バリアフリーの環境を提供するため,照明光のスペクトルを制御することで,色覚異常者の混同色に対する色弁別能力を高める照明光のスペクトルを理論的に導出し,実験で検証した.また,星和電機鰍ニ共同でLEDを用いた色覚バリアフリー照明機器を開発中である.
物体色と光源色に対する色の好き嫌いを心理実験で調べ,色の好みの度合いを推定する関数を実験結果から求めたところ,光と物体では異なる関数が得られた.また,企業ロゴの色と印象・感情に与える影響をアンケートと心理実験により調べ,企業の持つイメージや意図に適した色彩を提案するアルゴリズムとデータを作成した.更に,タイ人を比較対象に国や文化による影響についても検討した.